【上海=白山泉、北京=中沢穣】中国政府が公表した「香港国家安全維持法」案では、抗議活動の抑え込みなどを名目に、中国政府が香港に介入する手段がいくつも盛り込まれた。同法は今月末にも成立する見通しだが、香港ではすでに抗議活動の萎縮など影響が生じている。
二十二日付の中国共産党機関紙、人民日報(海外版)は「(法案は)一国二制度の安定を継続させるための策だ」という見出しの評論を一面に掲載した。法案への反発を避けたい意図がにじむが、法案内容は香港の自治弱体化につながる規定が並ぶ。中国政府の出先機関「国家安全維持公署」が新設されるほか、香港政府がつくる「国家安全維持委員会」は中国政府の「監督と問責」を受け、中国政府の顧問を受け入れる。
出先機関について、香港大法律学院の陳文敏(ちんぶんびん)教授は香港メディアに「香港政府は服従せざるを得ない。実質的に彼らによる香港統治となる」と話す。同委員会については、民主派の立法会(議会)議員が「中国政府の顧問が実質的な指導者となる」と指摘する。
また同法に関する裁判は行政長官が裁判官を指名するとの規定は、香港に多い外国籍の裁判官を排除する目的とみられる。高度な自治の源泉である司法の独立が脅かされ、公平な判決が難しくなりそうだ。
一方、同法案の概要説明には、同法の適用が過去にさかのぼるか言及がなかった。複数の香港メディアは、現在まで国家安全への脅威が続いていることを口実に過去の行為も摘発対象となる可能性を指摘する。同法成立は今月末の見通しだが、すでに抗議活動への参加者減少や、政治番組の打ち切りなど影響が広がる。
「外国勢力と結託して国家安全に危害を加える行為」も摘発対象となることにも懸念が出ている。新型コロナウイルスの影響で大規模な集会が禁じられるなど香港市民の抗議活動は先細りとなっており、外国からの支援に頼らざるを得ない状況だ。しかし同法は米国への支援要請なども摘発対象とする恐れがあり、民主派の対抗手段がさらに封じられかねない。
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